日本は国土の10%を占める河川氾濫の想定浸水区域に総人口の約50%、資産の約75%が集中し、洪水により河川堤防が破堤した場合、社会経済的に大きな被害が生じます。そこで、市区町村は地域の水害リスクとともに、住民の主体的な避難活動に必要な情報を住民に周知するために、洪水ハザードマップを作成し、紙面やインターネット上で公表しています。
しかし、水害に対する危機意識の高くない市民は、洪水ハザードマップを認識しておらず、また発災時に適切な避難行動を行えない傾向があることから、洪水ハザードマップの更なる普及と、水害に対する危機意識の向上、洪水時の適切な避難行動の促進を目的に、市区町村が生活空間である街なかの電柱や看板等に洪水時の危険度(浸水深)や避難場所を示した標識を掲示する「まるごとまちごとハザードマップ」という取組が始められました。標識に用いられる記号は、視覚的に読み取りやすく、河川が氾濫した場合の想定浸水深や避難場所を表します。
生活空間を洪水ハザードマップに見立てることにより、住民の危機意識向上と、国内外からの観光客を含めた市民等の適切な避難行動に寄与すると期待されていますが、土地の災害リスクを明示することに地権者等が難色を示したり、財政難の自治体においては設置費用が負担となるなど、「まるごとまちごとハザードマップ」の普及には課題も多くあります。
参考文献
・まるごとまちごとハザードマップ実施の手引き(平成18年7月)、国土交通省河川局
(2015年11月18日 初稿)