自然由来の重金属等汚染は、人為由来の重金属等汚染と異なり、①土壌・岩石中の重金属等の分布にばらつきが大きい、②含有量と溶出量の関係には明確な相関がない、③含有量が基準以下でも溶出量基準を超過する等の傾向があります。また、岩石は、風化に伴って重金属等の形態変化や酸性水の発生等が起きる可能性もあります。
自然由来の重金属等に対する法律は、平成22年に改正された土壌汚染対策法が該当しますが、ここで分析の対象となる土壌は、自然状態で2mm目のふるいを通過するものと規定されており、岩石は適用外です。ただし、掘削岩の人為的な流用後、時間経過により土壌となった場合は、法の対象となります。
開発行為がなく、人への健康影響に問題がない場合は、自然由来の重金属等が存在していても、重金属等の汚染に対して調査・対策等を行わない場合があります。しかし、重金属等の環境基準を超過する土壌を建設工事等により搬出する場合は、自然由来の汚染土壌として適切に管理する必要があります。
課題としては、①岩石から溶出する重金属等の評価方法がない、②環境基準で評価することが多く、周辺環境への付加量を評価していないなどがあげられます。自然由来の重金属等汚染は、人為由来よりも挙動が複雑であるため、環境中での移動特性を把握した上で、拡散防止対策やモニタリングなどを留意した施工を進めていくことが重要です。
参考文献
・環境省 水・大気環境局 土壌環境課(2012):土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)、p276-277
・建設工事における自然由来重金属等含有土砂への対応マニュアル検討委員会(2010):建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル (暫定版)、pp9-18、32、34、35
・独立行政法人土木研究所(2015):建設工事で発生する自然由来重金属等含有土対応ハンドブック、pp1-25、大成出版社
(2015年11月18日 初稿)