日本の国土は、荒川・利根川・多摩川流域の東京や神奈川、淀川・大和川流域の大阪など、人口・資産が集中、集積している大都市の低地帯(氾濫原)に大河川が流れています。万が一、これら大河川の堤防が決壊した場合には、甚大な被害が生じ、経済社会活動に大きな影響を及ぼすこととなります。このため、従来の堤防よりも安全で強固な高規格堤防(「スーパー堤防」ともいわれる)を“まちづくり”と一体的に整備する構想が生まれ、国土交通省が管轄する直轄河川事業として昭和62年度から開始されました。
高規格堤防のメリットとして、堤防を越えるほどの大洪水が起きても堤防が壊れることはなく、まちへの被害を軽減することができます。また、堤防の地盤を改良することで、地震に強い土地をつくることができ、安全で良好なまちづくりにも役立ちます。さらには、堤防の傾斜が緩やかになるため、背後地から川へアクセスしやすくなるとともに、高規格堤防上の施設からは、自然豊かな河川景観を眺望できるようになることも特徴のひとつです。
一方、高規格堤防は、まちづくり計画との調整や土地所有者の同意を得る必要があるとともに、整備する範囲の施設や住宅等は一度移転する必要がある等、完成するまでに長期間を要するものです。このような中、土地区画整理事業等のまちづくりと一体的に行うなど、計画的かつ効率的に実施していくことが求められています。
参考文献
・「高規格堤防(スーパー堤防)整備事業の手引」(財団法人リバーフロント整備センター編集)
(2015年11月18日 初稿)