温泉熱利用

我が国には、全国に28,000箇所を越える温泉が分布しています。温泉をくみ上げた際の温度が高い場合には、入浴に適した温度まで冷まして利用されていますが、その熱は殆どが利用されていません。温泉熱利用は、地域の貴重な観光資源である温泉を、元来の用途である浴用のみならず、発電、農業、冷暖房などに活用するもので、持続可能な社会の実現と地域産業の振興を両立させる取り組みが各地で開始されています。

地下にある熱エネルギーの利用方法として、地熱発電や地中熱利用が挙げられます。地熱発電には、地下から噴出する200℃以上の蒸気を使ってタービンを回す蒸気発電(フラッシュ発電)と、それ以下の中低温の温度でも、水よりも沸点が低い液体を蒸発させて発電を行うバイナリー発電があります。バイナリー発電は、加熱源系統と媒体系統の二つの熱サイクルを利用して発電することから、バイナリーサイクル(Binary-Cycle)発電と呼ばれています。また、その熱は発電に利用されるだけでなく、ハウス栽培や食品加工における乾燥利用など、発電利用後の温度変化に応じて二次的に利用することができます。

近年、ヒートポンプの利用が広まっています。ヒートポンプは熱源との温度差が小さい方が効率が高いという特徴があるため、温泉熱利用によって温度差を小さくすることで、給湯や冬場の暖房の低コスト化や効率利用に役立てることができます。熱需要に対して、化石燃料に頼らないため、環境面でも有効です。このように、温泉熱の有効利用の効果は大きいといえます。熱の効率利用による経済性向上や、環境面での社会的貢献等により、地域活性化や持続的な地域の形成が期待されます。

(2014年12月25日 初稿)

English

Hot spring heat utilization

定義

温泉熱利用とは、通常川などに放流される温泉の排湯を、二次利用することをいいます。