地盤の地震応答解析は、地中深くの震源で発生した地震波が地盤中を伝わって、地表付近でどのような揺れかたを示すかを把握するものです。地面に近い地盤は、礫・砂・粘土など土質の異なる地層が複雑に重なっていることが多く、性質が場所によっても大きく異なります。
地盤の性質によって地震波の伝わり方は異なり、硬い地盤では短周期(鋭い揺れ)、軟らかい地盤では長周期(ゆらゆらとした揺れ)になります。また、構造物も構造や形によって揺れ方が異なり、堅硬な建物は短周期、高層建物などは長周期となる傾向があります。そして、地盤と構造物の揺れかたがよく似ている場合は、揺れが共振して激しくなり、被害も大きくなる可能性があります。
このように、耐震設計・免震設計などの対策を行う上で、地盤の性質による揺れかたの違いを知ることは非常に重要で、その精度をよくするためには、地盤状況や対象地域で想定される地震波の性質を正しく把握する必要があります。
地盤の性質の把握には、地質調査(ボーリング、原位置や室内での各種試験)を行います。地震波については、実際に発生する地震をあらかじめ知ることはできないので、仮想モデルとして、対象地域周辺の活断層などによる内陸直下型地震や海溝型地震による地震波を数種類設定して解析を行います。
解析を行う場合の課題としては、複数ある解析手法によって得られる結果にバラツキがあるため、手法毎の長所・短所を理解して解析を行うことが必要です。また、解析技術の向上により、経済的な設計が可能になってきていますが、その反面、想定規模を超えた場合に損傷するリスクも高くなっていると言えます。
(2015年11月18日 初稿)