気象庁は、予め多くの想定地震による津波シミュレーション結果をデータベースに蓄積・保管し、地震発生時には、このデータベースから、発生地震の位置や規模などに対応する予測結果を即座に検索することで、沿岸に対する津波警報・注意報の迅速な発表を実現しています。
しかし、東日本大震災時には、想定した地震規模を遥かに上回ったため、地震発生から3分後に出された津波の予報値は過小評価となりました。その結果、避難の遅れに繋がり被害が拡大したとの指摘があるなど、大きな課題が残りました。この東日本大震災時の課題解決には、予め蓄積したデータベースによる予測に加え、観測情報を用いてリアルタイムに津波を予測する技術を取り入れることにより、より迅速に高精度の予測が可能となる津波警報の高度化が進められています。具体的には、海岸線から何十キロも沖合に設置されているGPS波浪計等のリアルタイム観測情報を活用した、津波予報精度の向上が進められています。
現在の津波警報は、海岸線での津波の高さの情報までしか発表されません。しかし、将来的には、海岸線を超えて遡上する津波が陸地のどこまでくるのか、その浸水範囲や到達時間といった詳細な情報が、高精度でリアルタイムに提供されるようになると考えられます。この高度化された津波警報システムは、国内だけでなく津波被害が懸念される世界各国で、津波被害軽減に貢献するものと期待されています。
(2016年09月14日 初稿)