海洋生態系モデル

低次生態系モデルは、海の中の食物連鎖を構成する植物プランクトン、動物プランクトン、小型魚類、大型魚類等のうち、動植物プランクトンまでの低次栄養段階の物質循環に着目したものです。主に、閉鎖性内湾の富栄養化現象の解析に用いられているモデルであり、植物プランクトンの光合成に大きく影響される有機汚濁物質の動態を定量化したものです。

具体的には、流れや拡散の物理過程に加えて、海域内で生じている植物プランクトンの増殖と死滅、動物プランクトンによる捕食、バクテリアによる死骸や排せつ物の分解、沈降、汚濁した底泥からの栄養塩類の溶出などの生化学反応過程と、これらの連鎖を通じた有機物、窒素、リン等の物質循環を数式化したモデルです。

最近では、沿岸域の開発や地球温暖化による藻場・干潟の減少・消失、夏季の貧酸素現象、それらに伴う漁業被害などを解明する底生生物、海藻を組み込んだ溶存酸素モデル、さらに、将来的には炭素循環を組み入れた地球温暖化モデルなど、低次生態系モデルは、社会的要求に応じて多様に発展しています。

一方で、モデルは実海域の全現象が表現されているわけでなく、海域特性や計算目的に応じて単純化しているため、結果の解釈では、仮定条件と使用データの有効範囲を適切に判断することが重要です。

参考文献
平野敏行監修(1998):沿岸の環境圏,pp669-798,株式会社フジ・テクノシステム

(2016年11月09日 初稿)

English

Marine ecosystem model

定義

海洋は地球規模の大気や海洋の大循環に大きな影響を与えているだけでなく、海洋生態系が地球規模の生物化学的循環において重要な役割を果たしています。海洋生態系モデルは、『海洋環境の中における生態系構成要素と物質循環の動態を表現する数理モデル』であり、地球温暖化、富栄養化など対象とする現象により、様々なモデルが構築されています。ここでは、最も実用的で一般的な低次生態系モデルを海洋生態系モデルとします。