下水道ストックマネジメント

私たちが普段使っている下水道は、日々老朽化が進行しつつあり、当初見込んだ耐用年数(管きょ・マンホールの場合は50年)を超える施設が増えています。しかし予算制約や税収不足のもとでは事前の対応が困難になり、管路による道路陥没事故、災害による機能不全等が相次ぎ、これらは早急に対応すべき課題となってきています。この事態をふまえ、全国で下水道ストックマネジメントの計画策定と実施が推進されています。

下水道施設の劣化や損傷、そしてそれらに伴う事故発生の度合いは、必ずしも経年数通りでなく、日頃の点検・調査が必要となっています。ただし、費用の問題により、常に全ての施設を調査することは出来ないため、これまで積み重ねてきた過去の調査結果の十分な活用が求められます。ストックマネジメントにより、老朽や損傷の具合を「緊急度」や「健全度」として数値化し、施設の条件や経年数による劣化傾向を把握できるようにします。

また、点検・調査した結果を受け、改築や修繕をおこないますが、多くの「未調査」の施設についても効率の良い、無駄の無い調査順位を計画しなければなりません。ストックマネジメントにより、事故や機能不全に関して起こりやすいような施設や、社会的影響の大きい施設を数値的に評価することで、優先順位にもとづく点検・調査を計画できます。また、点検・調査の結果や改築・修繕の結果をデータベースとして蓄積することで、その年度の財政状況に応じ、点検・調査、改築・修繕計画を最適なものにし、計画の見直しを可能にします。

下水道ストックマネジメントの効果は、サービス受益者である住民への説明責任を果たして理解を得ることにもあります。また、資金や人材管理と関連したアセットマネジメント導入に向けた課題把握にもつながります。

参考文献
下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドライン-2015年版-平成27年11月
国土交通省水管理・国土保全局下水道部 国土交通省国土技術政策総合研究所下水道研究部

(2016年11月14日 初稿)

English

Stock management of sewer system

定義

既存の下水道を、計画的に維持管理することで、その生涯費用を低減させる管理手法を意味します。
下水道事業を、持続的に営むために施設の点検・調査、改築・修繕を一体的に捉え、将来の状況を予測しながら計画的に管理し、サービス向上を図ってゆく必要があります。