サンゴ礁保全調査

サンゴの生育に適した水温は20~28℃であるため、日本におけるサンゴ礁の分布は主として琉球列島や小笠原諸島に限られています。また、国内のサンゴ分布の北限は、太平洋沿岸で千葉県館山、日本海沿岸で新潟県沖とされていますが、その分布域は近年の海水温の上昇により、北上しつつあります。国内最大のサンゴ礁海域は、石垣島と西表島の間に広がる石西礁湖(せきせいしょうこ)であり、東西約20km、南北約15kmにわたります。この海域には、360種を超える造礁サンゴが分布し、国際的にも重要なサンゴ礁となっています。

サンゴ礁保全調査は、①サンゴの種や分布を把握する調査、②生息環境を把握する調査に分けられます。①には、ダイバが潜って観察する調査や(図1参照)、衛星画像や航空写真、水中ビデオ画像等からサンゴを解析する調査(図2参照)があります。②には、地形、基質環境、流況、波浪、水温、水質等の物理化学的環境を把握する調査や、オニヒトデ等の生息量、サンゴと生息場を取り合う海藻草類の分布を把握する調査などが挙げられます。

例えば、白化等によりサンゴが減少した沖ノ鳥島では、産卵による種苗供給量が少ないことが回復を遅らせている要因として挙げられました。そのため、保全対策としては、親サンゴを、船で1,100㎞離れた沖縄の陸上種苗生産施設へ搬送した後、産卵させて大量の種苗を人工飼育し、沖ノ鳥島へ再移植する手法を用いています(図3参照)。

図1 ダイバによりサンゴの種や分布を把握する事例

図2 衛星画像からサンゴの被度を解析した事例

図3 沖ノ鳥島における稚サンゴ移植の事例

参考文献
片山美可他(2014年):サンゴの分布拡大のための時系列的な高分解能衛星画像を用いた沖ノ鳥島のサンゴの把握. 日本リモートセンシング学会第56回(平成26年度春季)学術講演会論文集

(2016年11月09日 初稿)

English

Coral reef conservation survey

定義

サンゴ礁保全調査は、サンゴの健全性やレジリエンス(回復力)を向上させるための保全対策検討を目的としています。サンゴ礁生態系は、豊かな生物多様性を育み、食料の供給や観光、レクリエーションの場の提供など多くの恵みをもたらす一方、環境変化に影響を受けやすい特徴を有します。近年は、高水温による白化現象、開発行為による破壊、オニヒトデ等によるサンゴ食害などの被害が頻発化しており、その保全が求められています。