地層処分

高レベル放射性廃棄物とは、原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)をリサイクルする際に発生する廃液を、ガラスと溶かし合わせて固めたもの(ガラス固化体)です。

私たちは、宇宙から降りそそぐ宇宙線、大地や食品・水、など自然にある放射線、レントゲンやCTスキャンなどの人工的な放射線を日常生活の中で受けています。しかし一度に多量の放射線を受けると人体に悪影響を及ぼします。高レベル放射性廃棄物の放射能(放射線を発する力)レベルは非常に高いので、人間の生活環境から隔離する必要があります。

処分方法について様々な方法が検討された結果、ガラス固化体をオーバーパックと呼ばれる金属等の容器に封入し(人工バリア)、地下深部に埋設する(天然バリア)ことで多重バリアによって長期間にわたり安定的に隔離する地層処分が、実現可能な最もよい方法として現在世界共通の認識となっています。

日本でも1962年に処分方針の検討が開始され、1976年から地層処分の研究が始まりました。1999年には日本でも地層処分が可能という報告(核燃料サイクル開発機構(現:日本原子力研究開発機構)“わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ”(以下“第2次取りまとめ”))がなされ、2000年には、最終処分の推進体制を整備するため「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定されて、地層処分事業の実施主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立されました。

しかし、核燃料サイクル開発機構(現:日本原子力研究開発機構)が技術的信頼性を示した“第2次取りまとめ”に対して、地層処分の安全性に対する考え方が十分ではないとの指摘もあり、処分地の選定方法と併せて今後も議論が待たれる状況です。

現在処分施設の計画や検討は世界中で進行中ですが、1970年代から検討が開始された欧米を含めて、2016年現在稼働を始めている地層処分場はありません。

(2016年11月09日 初稿)

English

geological disposal

定義

地層処分とは、原子力発電等の結果生じる高レベル放射性廃棄物を、人間の生活環境に影響を及ぼさないように、地下深部の地層中に埋設し、地下深部の圧力や厚い地層の遮蔽力を利用して、数万年以上の長期にわたって安全・確実に隔離する方法です。