硝酸性窒素汚染

主な汚染原因:硝酸性窒素汚染は、農地で用いられている肥料、家畜の糞尿、生活排水などを通じて、窒素が負荷される(供給される)ことが原因で発生します。農地に散布された窒素肥料は、土壌中でアンモニア性窒素となり、土壌中の微生物の働きにより、亜硝酸性窒素に変化した後、硝酸性窒素になります。硝酸性窒素といえば、前形態の亜硝酸性窒素も含む場合が多いです。硝酸“態“窒素とも呼ばれます。

健康被害:「硝酸性窒素及び亜硝酸窒素」は、幼児にメトヘモグロビン血症を引き起こすことが知られており、地下水の環境基準(10mg/L以下)が定められています。環境基準の超過率が高く、硝酸性窒素汚染は、水道水源を地下水に頼っている地域において深刻な問題となっています。

汚染のメカニズム:自然状態では低濃度なため、地下水環境基準を超えるほどの高濃度で硝酸性窒素が検出された場合、人間活動が原因と考えられます。土壌への窒素の供給源は、面源(耕作地など)と点源(生活排水など)とに区分できます。硝酸塩として存在している窒素は、水に対する溶解度が大きいため、汚染は地下水とともに比較的広範囲に及ぶという特徴を持っています。

対策に向けて:自治体の窒素負荷量削減対策により地表からの負荷が収まった後でも、不飽和帯や土壌中に蓄積した窒素(による汚染)が大きな課題となっています。水循環の視点で地下水の挙動を把握することなどが求められているといえます。

参考文献
・「地下水用語集」(平成23年11月)公益社団法人日本地下水学会編
・「未来へつなごう私たちの地下水~気づいてますか?硝酸性窒素汚染~」環境省 水・大気環境局 土壌環境課 地下水・地盤環境室
・「硝酸性窒素等による地下水汚染対策マニュアル」(平成28年5月)環境省 水・大気環境局 土壌環境課 地下水・地盤環境室
・「持続可能な地下水利用に向けた挑戦―地下水先進地域熊本からの発信―」(平成29年2月)嶋田純他

(2017年9月22日 初稿)

English

Nitrate nitrogen pollution

定義

硝酸性窒素汚染とは、硝酸塩、硝酸イオン(水中)として存在している窒素が、主に地下水中で環境基準(硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素)を超過している状態をいいます。この「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」は、全国の地下水の水質測定結果において、環境基準の超過率が、継続して地下水環境基準項目の中で最も高くなっています。