地盤沈下シミュレーション

軟弱な粘土層が分布する地域で地下水を取水すると、間隙水圧が減少し、粘土層の層厚が小さくなります。地層の層厚が小さくなる現象を圧密と言い、地表面に重量物を載せても生じます。いずれも地表面が低下、すなわち地盤沈下となります。圧密には地層中の水圧変化が係わるので、地盤沈下シミュレーションでは、地下水も一緒に扱うことが多く、多孔質体モデル、アナログモデル、解析モデル、数値モデルがあります(平山、前川、1994)。数値モデルは、地下水と地盤沈下のメカニズムを、数式や地盤特性などのデータで計算するもので、非常に複雑な条件を扱うことができます。

地盤沈下は1950年代後半~1970年代前半に国内の各所で進行し、建物のひび割れ、道路の陥没などの被害が生じました。一方、地下水は貴重な水資源であり、都市用水及び農業用水の全使用水量約809億m3のうち、約92億m3(約11%)を担っています(H23の値、国土交通省、2015)。地下水の取水状況によって、どの程度の地盤沈下が生じるのかを、予め把握することが必要です。実際に地盤沈下を起こすわけにはいきませんので、実物に代って解析する方法としてシミュレーションが用いられます。

広い範囲で地盤沈下が進行すると、高潮や洪水の危険性が増すことになります。地盤沈下シミュレーションにより解析技術と、その基礎となる空間情報を駆使し国土の健全化と、適切な地下水資源の活用の両立を図っていくことが必要です。

地盤沈下による建物への被害(佐賀県白石町地内、2014年1月28日撮)

参考文献
・国際航業株式会社創立60周年記念出版プロジェクト(2007):モデリングとデザインの調和、pp256-257、国際航業株式会社
・公益社団法人日本地下水学会(2011): 地下水用語集、pp42-65、理工図書
・国土交通省水管理国土保全局水資源部(2015):日本の水資源(平成26年版)、pp81-142
・平山利晶、前川統一郎(1994):地下水問題この10年間とその将来展望-水収支シミュレーション、pp96-102、日本地下水学会編
・環境省水・大気環境局(2014):平成25年度全国の地盤沈下地域の概況、pp1-26

(2015年11月18日 初稿)

English

Land subsidence simulation, land subsidence model for simulation

定義

地盤沈下シミュレーションとは、地表面が低下する現象(地盤沈下)を、模型や数式等に置き換えて、解析することです。シミュレーションで用いる模型、あるいは、計算する手法やデータ類をまとめたものをモデルと言います。地下水取水に伴う地盤沈下では、地層中の水圧挙動が係わるため、地下水・地盤沈下シミュレーションと表記することもあります。