トンネル補修・補強設計

トンネル対策は、点検調査の結果を基に、短い期間を対象としたトンネルの機能を維持する応急対策と、中~長期的にトンネル機能を回復・維持する本対策があります。
応急対策は、利用者に被害を与えるような覆工コンクリート等のうき・はく離などの変状が発見された場合に、うき・はく離部分を応急的にハンマーで取り除くなど、トンネル機能を最低限確保するための対策です。
補修・補強対策は本対策にあたり、詳細調査を行った上でトンネル構造物として安全性の機能が低下し、対策が必要と判定された箇所に、中~長期的にトンネル機能を回復・維持することを目的に適用する対策です。

道路トンネルの場合などは、車両の走行安全の確保やトンネル劣化の進行抑制や抑止、さらに美観の維持を目的とする場合に補修対策として行い、通行車両に対するコンクリートのはく落および劣化対策工、漏水箇所の補修や凍害防止などの対策工を行います。補強対策は、トンネル覆工の耐力の強化や地山の改良など、外力による変状対策が必要な場合に行います。

補修・補強対策は、小規模かつ短時間で施工できるものから、大規模かつ長時間にわたって施工するものまで様々な種類があります。現在も新たな材料や工法が編み出されており、種々の対策工を適材適所に選定する必要があります。
よって、トンネル補修・補強設計では、変状の現れ方・環境条件・構造などを把握し、変状原因を推定して、トンネル機能に応じた対策工を選定するために、以下の事に留意して行います。
① 履歴調査
トンネル設計図、地質調査資料、トンネル工事誌、補修・補強履歴、点検調書などの資料を収集分析し、変状原因や工法選定のための情報として活用します。
② トンネル構築工法の把握
トンネルを構築する工法は、昭和60年程度を境に矢板工法とNATM工法に大別され、構築工法により各変状発生の特性を考慮する必要があります。古いトンネルでは工法や材料の違いを十分に認識した上で、補修・補強設計をおこなうことが重要でとなります。
③ 工事中の安全の確保
道路トンネルなどの補修・補強工事では、一般利用者に対して車線や時間規制下での工事となるため、施工中に一般利用者に対して十分な安全が確保できる工法を計画する必要があります。
④ 耐久性
トンネル補修・補強工は、工事に長い時間を必要としたり、多大な費用を必要とするため、施工後も十分な耐久性が期待できる工法や材料を選ぶことが必要です。
⑤ 経済性
変状トンネルの補修・補強は特殊な工事になることが多いため、多大な費用を必要とします。その中でも最も経済的な工法や材料を選ぶことが必要となります。

(2014年12月22日 初稿)

English

Tunnel ripair(補修) reinforcemento(補強)

定義

トンネル補修・補強設計は、トンネル工事が完了した後に、種々の原因により変状したトンネル構造の機能が維持・回復するために必要な対策工を設計することです。一般的に補修対策としては、覆工の劣化対策および漏水・凍害対策が主となり、外力対策を行う必要がある場合が補強対策となります。