流動・水質拡散モデル

モデルでは、水中の物質が、周囲との濃度差により濃度の低い方向へ運搬される現象を、水の流れと物質の変化に関する物理的な理論式を用いてコンピュータで計算しています。例えば、水を張った洗面器にインクを1滴落とすと、インクが水中で自発的に散らばるため、落ちた場所から同心円状に広がります(図1)。これを「拡散」と言います。また、流れる川にインクを1滴落とすと、拡散すると同時に、流れにより下流に向かって広がっていきます(図2)。これを「移流」と言います。モデルでは、移流と拡散によるインクの広がりを理論式で計算します。モデルには、流れ、水質濃度など現象の時空間的スケールの規模により、計算範囲や、モデルの解像度に係る計算格子の大きさ、計算時間の長さなどを設定します。具体的には、地形の再現性、計算手法、計算時間の設定などから、一次元~三次元の地形モデルがあり、その計算格子は、長方形、正方形、三角形などで表現されます。モデルは、水質汚濁防止法によって定められる公共用水域への工場、発電所などからの直接排水(汚濁排水、温排水)の影響を予測し、環境基準等との適合性評価に利用することから始まりました。最近では、コンピュータの発達により、大きな三次元空間を水平・鉛直方向を数mという小さな解像度で解析可能となったこともあり、水質だけでなく、水産生物の浮遊幼生の産卵場・最適生息場の推定にも応用されています。

図1 洗面器に落としたインクの広がり方

図2 川に落としたインクの広がり方

図3 鉛直2次元モデルによる河川

(2017年9月22日 初稿)

English

Water quality model consisting of physical transport

定義

流動・水質拡散モデルは、『水中での水質の広がり方を表現する数理モデル』であり、質量が移動中に変化しない保存系と、化学・生物反応で変化する被保存系の物質を対象とする2つに区分されます。流動には、地下水など1日に数cmの流れや、河川など1秒間に数mの流れがあり、このモデルでは、この様な水の流れによる広がり(移流)と物質の分子運動による広がり(拡散)から、ある地点・ある時刻の濃度を計算します。