ため池ハザードマップ

ため池とは農業用水の確保を目的とし、人工的に築造された池を指します。日本にはため池が全国に約21万箇所あり、ため池のほとんどは昭和初期以前に築造されたものです。よって、池を支える堤体の基礎地盤や土質が不明なため安全性を把握できていないため池が多く、このようなため池の堤体が地震等により破堤するリスクがあります。実際、福島県須賀川市藤沼湖では東北地方太平洋沖地震後に堤体が決壊し、下流の人家を襲い死者行方不明者が出ました。

この背景のもと、沿川住民の生命と財産、ため池下流の農地・農業用施設及び公共施設を守るため、平成24年3月に閣議決定された土地改良長期計画では、ハード・ソフト一体となった総合的な災害対策の推進による災害に強い農村社会の形成が目標に掲げられ、減災対策としてため池ハザードマップの整備が挙げられています。

ため池ハザードマップは、住民の避難に資する情報として、事前に準備すべき物、避難時の注意点、避難情報に応じて取るべき避難行動等が示されています。また、浸水区域航空写真や数値地形図を背景に、氾濫水が流下した場合に想定される浸水深がメッシュ単位でランク別に着色され、氾濫水の到達時間、避難方向、避難場所等についても示されています。ハザードマップは、ため池破堤による災害リスクを住民に周知し、住民による自主的な避難意識を啓発するものであり、ソフト面での対策と言えます。

参考文献
農林水産省 農村振興局 ため池ハザードマップ作成の手引き 平成25年5月
農林水産省 農村振興局 土地改良長期計画 平成24年3月

(2016年10月24日 初稿)

English

hazard maps for inundation of irrigation ponds(仮訳)

定義

ため池ハザードマップとは、ため池堤体の破堤による水害リスクを住民に周知し自主的な避難意識を啓発することを目的とし、住民の避難に資する情報として事前に準備すべき物、避難時の注意点、避難情報に応じて取るべき避難行動等を示し、航空写真や数値地形図を背景に氾濫水が流下した場合に想定される浸水深をメッシュ単位でランク別に着色し、氾濫水の到達時間、避難方向及び避難場所等とともに示したマップのことを言います。