底質調査

底質とは、河川、湖沼、海域の水底を構成する堆積物や岩の総称です。水質が汚濁されると底質に有機物や化学物質などが蓄積され、その後、化学物質などが水中に溶出します。物質の蓄積が急速であった場合でも、物質の水中への溶出が長期間続き、魚介類等への被害が長期化することがあります。そのため、底質調査は汚濁状況の現況把握と将来への影響予測の目的で実施されます。

一般に底質調査では、水底の土砂を「採泥器」で採取し、これを持ち帰って分析します。採取方法として、底質の表面を採取する場合は、船上よりエクマンバージ型採泥器等で採取します(写真1)。一方、水底から鉛直方向に採取する場合には、潜水士がアクリルパイプ等を差し込む柱状採泥を行います(写真2)。

分析は、土砂中の成分含有量と水中に溶け出す溶出量を対象に実施します。分析項目は、①COD(化学的酸素要求量)、硫化物、窒素・リン等の有機汚濁指標、②PCB、水銀、ダイオキシン類等の有害物質指標です。

高度経済成長期以降、海域や湖沼で有機汚濁が進み、水底付近の酸素が減少する貧酸素現象が発生し、夏場に魚介類が斃死する現象が多発化しました。このため、環境省では、海域や湖沼の水質を測る新たな指標として、水底付近に含まれる酸素量「底層溶存酸素量」を環境基準に追加しました。底質調査でも、水環境における有機汚濁メカニズムの解明や酸素消費速度の測定など、新たな調査手法の開発が望まれています。

また、深海底の堆積物は、粘土、シルト、生物遺骸などの微細な物質が長い時間をかけ沈降して形成されたものであるため、堆積土中には、過去の地球の歴史が残されています。最近では、巨大地震の発生時期や地震の発生メカニズム、生命の起源などの解明を目的に、「地球深部探査船ちきゅう(国立研究開発法人海洋研究開発機構:JAMSTEC)」が海底下7,000mのコアーサンプルの採取に挑戦しています。

写真1 エクマンバージ型採泥器を用いた船上からの採泥

写真2 アクリルパイプを用いた柱状採泥

(2023年01月19日 更新)
(2015年11月18日 初稿)

English

Sediment Quality Survey

定義

底質調査とは、河川、湖沼、海域の水質汚濁等により、水底に化学物質等が蓄積し、また溶出する状況を調べるもので、水環境の保全に役立てられます。