確率論的津波ハザード評価

現在の津波浸水想定や避難等の対策は、最大クラスの津波(L2津波)と比較的発生頻度の高い津波(L1津波)の二つの津波に対する評価が基本となっています。しかし、過去に発生した津波とまったく同じ津波が繰り返し発生することはなく、地域ごとに津波を引き起こす地震の発生メカニズムの違いによる不確実さがあります。このため、地域の持つ津波被害の危険度(リスク)を評価するためには、日本周辺海域で発生する可能性のある大小さまざまな規模の地震津波を網羅したハザード評価が必要となります。

津波ハザードを評価する方法としては、決定論的な評価と確率論的な評価があります。決定論的な評価とは、発生頻度などが明確にされている地震により発生する津波のハザードを評価するもので、例えば、2011年東北地方太平洋沖地震津波は、既に観察されているので決定論的な事象になります。一方、確率論的な評価とは、不確定な地震によって発生する津波のハザードを評価するもので、例えば、100年以内に発生する未来の地震津波は観察できないので、確率論的な事象として取り扱うことになります。具体には、地域ごとに設定した複数の津波シナリオに対する津波シミュレーションを実施し津波高を算出、統計処理により超過確率別に津波浸水想定を示します。この手法を、確率論的津波ハザード評価と言います。

この評価から得られる超過確率別の浸水想定をハザードマップに示すことで、津波ハザードが社会にもたらすリスクや脆弱性などの評価、あるいは土木施設等の計画条件判断のための検討資料としても利用でき、事前の防災計画や対策に資すると期待されます。

(2019年07月24日 更新)
(2015年11月18日 初稿)

English

Probabilistic Tsunami Hazard Assessment

定義

発生する地震津波は不確定性を有するものという前提にたち、ある地点またはある地域において、来襲する可能性のある津波シナリオを網羅して、確率論的に対象地点または対象地域の津波リスクを定量化する手法です。