救急医療・広域災害システム

1980年代に各都道府県において、救急医療機関からの救急搬送受入の可否情報をもとに、救急隊などがその情報を救急搬送時の受入先選定に利用する「救急医療情報システム」が構築されました。その後、1995年の阪神淡路大震災を契機に、災害発生時における医療機関の被災状況・受入可能人数などを登録し関係機関にて情報共有する機能が加わり、「広域災害・救急医療情報システム」となりました。

2010年に佐賀県にて県内の全ての救急車へタブレット端末を搭載した事を皮切りに、救急車へタブレット端末を搭載し、受入先医療機関の照会情報(受入の可否情報)や他の救急隊が登録する搬送実績情報を、救急車内のタブレット端末を使って確認することが可能となってきました。(和田、2012)

最近では、デジタルペンによる傷病者情報の伝票記入や車載カメラ等により、受入先の医療機関へ収容する前に傷病者の状況・状態を伝えることにより、医師から搬送中の救急隊員への対応指示や、医療機関側における受入前の事前準備ができるようになりました。

今後は、傷病者の状況に応じた最適な搬送先医療機関の選定補助や、救急隊がおこなう応急処置等に対する医師との連携、搬送情報を基にした統計分析による医療体制の改善検討などに活用される機能強化が必要になると言われています。

参考文献
・和田直人他(2012年): 救急医療情報システム「Mefis」.災害医療とIT(田中博)、pp.86 - 90、ライフメディコム

(2015年11月18日 初稿)

English

Emergency medical information system:EMIS

定義

このシステムには、厚労省が整備する「広域災害・救急医療情報システム」(通称:国のEMIS)と各都道府県が構築する「広域災害・救急医療情報システム」(通称:県のEMIS)があります。県のEMISでは、医療機関側が登録する救急搬送受入の可否情報や災害発生時の被災状況・受入可能人数などを、消防機関(救急隊)などが参照することにより救急搬送時の受入先選定などに利用します。