避難シミュレーション

避難シミュレーションには図面上で避難者の存在する場所から避難先までの位置関係をもとに所要時間を算定するような簡易なものから、避難者個々の逃げまどいなどの行動パターンをコンピュータ上で計算する複雑なものまであります。主に、火山災害、原子力災害、津波、火災などの災害時における人々や車両などの避難に関する問題点の把握や、適切な避難計画を検討するための根拠材料として実施されることが多くあります。

簡易的な避難シミュレーションの例としては、消防庁国民保護・防災部防災課から平成25年に出された「津波避難対策推進マニュアル検討会報告書」に記載されている「津波避難困難地域」と呼ばれる津波が到達する時間内に安全な場所まで逃げ切れない領域を抽出するものがあります。これは避難準備時間に、歩行速度で避難場所までの距離から求められる移動所要時間を加えた時間と地震発生から津波が到達するまでの時間を比較します。

複雑なシミュレーションとしては、「マルチエージェントシステム」と呼ばれる処理によって、複数の避難者の複雑な動きをコンピュータ上で計算するものがあります。建物や地下街から人々が脱出する動きを予測したり、時間を追って変化する道路上の避難車両の動きを渋滞などによる速度低下も取り入れて計算したり、様々な避難シミュレーションが行われています。このようなシミュレーションでは、避難所要時間を予測するだけでなく、避難経路上の弱点を抽出することや、経路整備や避難誘導の効果などを洗い出すことができます。

(2015年01月06日 初稿)

English

Evacuation Simulation

定義

避難に要する時間、経路、問題点を把握するために、避難者が安全な場所へ向かって移動する様子を、避難者の位置と避難先の位置情報をもとに、コンピュータ上で仮想したり、図面上で算定したりします。