下水熱

図1 下水と大気の温度差

ここで、具体的な利用例として、下水熱を利用した高効率ヒートポンプ給湯システムの仕組み(図2)を紹介します。
まず、①下水の熱を下水管路内に設置した熱交換器により熱を回収し、②媒体により熱をヒートポンプに送ります。次に③ヒートポンプにより、少ない電気エネルギーを使用して、下水の熱を回収して大きな熱エネルギーに変換します。この熱エネルギーにより65℃前後のお湯を沸かします。最後に④このお湯を貯湯槽に貯めて、必要な時に給湯として利用するという仕組みです。
図2 下水熱を利用した高効率ヒートポンプ給湯システム

国内の下水熱利用事例をみると、都市部の下水熱ポテンシャルは高いにも関わらず、地域における利用事例は十数件にとどまっており(図3)、下水熱利用の普及が進んでいないのが現状です。
図3 地域における利用事例 ※1

その原因として、設備導入コストの他、事業計画段階の下水流量・温度の調査コストが高く、事業化までなかなか進まないことがあげられます。この課題を解決するために、マンホールごとに下水熱ポテンシャルの分布を示すマップを作成することが有効です(図4)。
このマップを活用して熱供給量の高い引き込み可能なマンホールを把握するのと同時に、熱需要量が高い施設を整理して、需要と供給のマッチングを検討します。
図4 下水熱ポテンシャルマップ ※2

参考文献
※1 下水熱利用の現状とその推進に向けた取り組み [国土交通省]
※2 下水熱ポテンシャルマップ(詳細ポテンシャルマップ)作成の手引き [国土交通省]
下水熱でスマートなエネルギー利用を~まちづくりにおける下水熱活用の提案~ [国土交通省]
下水熱ポテンシャルマップを用いたフィージビリティスタディ [澤部 孝一 三毛 正仁]

(2017年10月4日 初稿)

English

Sewage heat recovery

定義

下水の温度は一年を通して安定しており、大気の温度と比べて夏は低く、冬は高くなる特長があります(図1)。この下水と大気の温度差を暖房や給湯に活用することにより、化石燃料の消費が抑制され、CO2削減効果が期待されます。