粒径効果

自然の岩石中に、特定有害物質の一種である重金属を含むことがあります。自然由来であっても、環境基準を超過する重金属を含む岩石を掘削し、地表に移動した場合には、汚染土壌として適切に取り扱うことが必要です。一方、溶出量試験では2mmのふるいを通過したものを試料とし、その結果は土壌汚染対策を検討するための根拠の一つとなります。一方、工事で掘削した岩石の粒径は2mmよりも、かなり大きいため、溶出量試験の結果は粒径効果の影響で実際の岩石からの溶出量よりも高い値を示します。※。
 2mm粒径の溶出量試験で土壌環境基準を超過する岩石であっても、元々の粒径での溶出量は土壌環境基準に適合する濃度であれば、対策が不要な土砂として取り扱える可能性があります。そこで、工事で掘削される岩石を用いた大粒径溶出量試験など、実際の粒径を踏まえた試験を行うことで、適切な土壌汚染対策を講じることができます。
 このように大きな粒径の掘削岩石で汚染対策を検討することは、現場状況に即した方法と言えます。しかしながら、粒径効果による重金属等の溶出挙動は十分に解明できておらず、また、実粒径の試験方法や評価方法も確立されていません。風化等で細粒化することの安全性も課題です。今後、さらに知見を蓄積しつつ、安全で効果的な土壌汚染対策を行うことが必要です。
(※粒径だけでなく、温度やpH、酸素濃度なども関係しますので、低くならない場合もあります)。

図1 粒径による表面積の違い(球の場合)

(2017年11月15日 初稿)

English

particle size effect

定義

同じ岩石であっても、粒径の違いによって、岩石中に含まれる重金属の、水への溶け出す濃度が異なること。体積が同一となるように粒の数を揃えた場合、大きな粒径の方が、体積に対する表面積の比率は小さく、水に接触する面積が小さくなります(図―1)。表面積が小さいほど、重金属の溶け出す量は少なくなるため、法令で定められた溶出量試験(試料の粒径は2mm以下)の結果は、実際の濃度を過大に評価する可能性があります。