海洋生態系モデル

海洋生態系モデルとは、大小様々な生物群集と非生物的環境(海水、底質、大気など)から構成される生態系を、その構成要素と物質循環に着目して数理的に表すものです。地球温暖化、富栄養化などの着目する現象に応じて様々なモデルが提案されています。

海洋生態系では、海中の食物連鎖を担う者として、植物プランクトン、動物プランクトン、小型魚類、大型魚類などをあげることができます。このうち、動植物プランクトンは低次の栄養段階を担っており、その物質循環を解明するモデルを低次生態系モデルと言います。
低次生態系モデルの把握は沿岸の海洋環境の解明に役立ちます。特に、閉鎖性内湾の富栄養化現象の解析に適用され、赤潮・青潮のような有機汚濁物質の動態を定量化します。以下では、このモデルについて説明します。

低次生態系モデルでは、物理過程、生物化学反応過程と物質循環を数式化して表します。物理過程としては流れや拡散があげられます。また、生物化学反応過程としては植物プランクトンの増殖・死滅、動物プランクトンによる捕食、バクテリアによる死骸・排せつ物の分解、沈降、汚濁した底泥からの栄養塩類の溶出などがあげられます。これらのプロセスは、有機物や窒素・リン等の栄養塩、溶存酸素などを指標として計算されます。

低次生態系モデルは、沿岸開発に伴う流入汚濁負荷量の増大や地形改変等の影響の予測・評価や水質改善対策の効果予測などに、よく用いられています。さらに、近年では、地球温暖化への適応や二枚貝等の水産資源回復などを目的として、炭酸系過程を加えたモデルや水産生物の動態モデルと組み合わせたモデルなどが開発される等、新たな社会的要求に応じて多様に発展しています。

なお、モデルでは実海域の全現象が表されず、海域特性や計算目的に応じて重点化または単純化しているため、結果の解釈においては、仮定条件と使用データの有効範囲を適切に判断することが重要です。
参考文献
中村 仁(2000):海洋生態系におけるモデル化研究とその役割について.海洋科学技術センター試験研究報告,42. pp.117-125

(2023年01月19日 更新)
(2016年11月09日 初稿)

English

Marine ecosystem model

定義

海洋生態系モデルとは、大小様々な生物群集と非生物的環境(海水、底質、大気など)から構成される生態系を、その構成要素と物質循環に着目して数理的に表すものです。地球温暖化、富栄養化などの着目する現象に応じて様々なモデルが提案されています。