港湾・漁港・海岸保全施設は、要求される機能を有するように安全性や耐久性等と経済性が合理的に両立するように作られた土木構造物です。港湾や漁港施設の必要機能では、波浪や地震に対して壊れない安定性の他に、利用船舶の荷役、乗降など経済活動の機能があります。また、海岸保全施設では、波浪から背後域を防護するために必要な高さ、地震に対して壊れない安定性機能の他に、海水浴場としての親水機能、海岸線保持の景観機能など、地域特有の機能もあります。したがって、機能とは、設計基準からなる防災的側面の他に、時代の要請、地域住民などの要望から、人間活動、自然環境的側面の機能が付加されるため、機能の定義は、常に変化し続けるものなのです。
機能変化の代表例としては、阪神・淡路大震災や東日本大震災等の発生が挙げられます。これらの災害の後、地震、津波及び高潮における耐震性、耐津波などの機能、設計条件が大幅にレベルアップしました。また、構造物の性能寿命には、機能的寿命の他に、材質等の劣化による物理的寿命、維持費高騰による経済的寿命があり、機能評価とは密接な関係にあります。現在の機能評価では、耐震性や耐津波・高潮に対する施設の安定性、老朽化に伴う断面性能低下について構造計算手法等により検討しています。
今後の機能評価手法としては、地球温暖化、巨大地震の発生、構造物の老朽化などの将来課題への対応が望まれています。
参考文献
・国土交通省港湾局監修:港湾の施設の技術上の基準・同解説(平成19年7月),社団法人日本港湾協会
・水産庁:漁港・漁場の施設の設計参考図書(2015年版),公益社団法人全国漁港漁場協会
・全国農地海岸保全協会,社団法人全国漁港漁場協会,社団法人全国海岸協会,社団法人日本港湾協会:海岸保全施設の技術上の基準・同解説(平成16年6月),海岸保全施設技術研究会編
(2016年11月09日 初稿)