データ同化とは、現象を観測することで得られるデータ(観測値)をシミュレーションモデルへ取り込み、最尤推定又は最大事後確率推定によって、現象の最も確からしい状態(初期値、パラメータなど)の推定(再現)精度を向上させる作業です。これによって、空や海などの観測の難しい地点の現象を予測することができます。同化手法には主に逐次型(カルマンフィルタなど)と非逐次型(四次元変分法など)があります。
データ同化は大気・海洋学の分野で研究されてきた技術ですが、現在、多岐に渡る分野で応用されはじめています。例えば、天気予報、大気汚染物質の濃度、海面水温、海底地形、津波・高潮の水位、地震の震源などの推定に利用されています。さらに、現象の原因(起源)を逆推定することもできます。
例えば、全球大気中の微量成分(二酸化炭素、メタン、オゾンなど)の濃度をデータ同化で推定する際に、ガス濃度だけではなく、その起源である吸収排出源・量もパラメータとして同化手法に取り込むことで逆推定することができます。
このようにデータ同化は現象及びその起源を同時に推定できるため、現象のメカニズムの理解にも役立てられています。今後、観測技術の発展並びに大規模演算機や同化手法の進歩により、データ同化による現象予測の高精度化と他分野への展開が進むことで、災害対応、大気汚染の監視、気候変動などに資する有益な情報が提供されると期待されています。
参考文献
樋口知之(2011):データ同化入門 (予測と発見の科学),pp.240,朝倉書店
淡路敏之・池田元美・石川洋一・蒲地政文(2009):データ同化―観測・実験とモデルを融合するイノベーション,pp.284,京都大学学術出版会
(2017年09月22日 初稿)