四方を海に囲まれた我が国にとって、港湾は、国民生活と産業活動を支える重要な物流・生産基盤です。背後の地域には、多くの住民と資産が集積しているため、地震、高潮、津波等の災害に対しても安全であることが必要です。
港湾施設は、国土交通省港湾局監修の「港湾の施設の技術上の基準・同解説」という図書に基づき、設計します。ここで、港湾施設を防護する外郭施設の防波堤を例として説明してみます。設計に必要な条件としては、構造物への外力としての波、構造物の安定性を決定する水深や海底地盤の性状(礫、砂、粘土など)を解析し、計画した構造物の形状(ブロックの長さ・幅・奥行き、重さ、材質など)をもとに安定計算を行い、構造物の安全性を確認します。構造物の最終決定では、安全性の確認の他に、経済性や施工性等を比較して行います。
港湾や港湾施設は、国の基本方針を受け目標年次に向けた港湾の整備計画である港湾計画によって整備されています。2005 年3 月の答申では、1995年に発生した阪神・淡路大震災を踏まえた「地震に強い港湾のあり方」(交通政策審議会答申)が出され、それを受けて、「港湾の施設の技術上の基準・同解説」が2007年に改訂されました。このように、港湾施設設計の分野においても、社会の要請により設計方法が変化していきますが、今後は、さらに、老朽化した施設を長寿命化させる施設管理の観点を加えた施設設計へと変化していくものと考えられます。
参考文献
・「港湾の施設の技術上の基準・同解説」日本港湾協会 H19.9
(2015年11月18日 初稿)