人間は左右2つの眼をもっており、同一の点からきた光が左右それぞれの眼に入る2本の光線がなす角(これを収束角とよびます)が異なることにより遠近感が生じます。対象物が置かれている位置の奥行きにより、収束角の大きさは異なり、これが網膜に写る像の位置のずれの量として知覚され、遠近感が生み出されます。
実体写真を、左側のカメラで撮影された写真を左目で、右側のカメラで撮影された写真を右目で、同時に見たときも、これと同じことが起こり、両方の写真に写っている部分を立体的に見ることができます。左右の対応する写真上の点からでた光線が交わる角(収束角)は、写真上の位置のずれが大きいほど大きくなるため、人間の眼には立体的な像(これを立体像といいます)として見えます。ただし、どのような実体写真でも実体視ができるとは限りません。実体写真を撮影したときの2台のカメラの光軸が平行に近いほど、実体視が容易であり、2本の光軸が交わる角度が大きくなると、実体視が難しくなります。
アナログ写真の実体視は、レンズや鏡を利用した実体鏡を用いることが一般的です。実体鏡を用いない肉眼実体視も簡単な訓練を行えばできるようになります。アナグリフ効果を利用した余色立体視や、偏光メガネやレンチキラー板を用いて立体視する方法などもありますが、特別に加工した写真が必要となるため、あまり一般的ではありません。
デジタル画像の実体視では、1台のディスプレイに左右のカメラで撮影された画像を交互に表示し、それを偏光メガネや時分割シャッタメガネなど、左右両眼に到達する画像を分離する特殊なメガネを通して見る方法がよく用いられています。
(2015年11月18日 初稿)