近年、水産生物の生活史に対応した良好な生育環境空間を創出する漁場整備が実施されています。これは、資源管理の観点から、人工魚礁と藻場・干潟の造成、湧昇流構造物などを組み合せた手法であり、水産資源の回復や生産力の向上を目的とした漁場造成です。
人工魚礁は、利用目的から漁獲管理魚礁、産卵・幼稚魚保護礁に区分されますが、一般的な漁獲管理魚礁には、海底に設置される重力式の構造物である沈設魚礁と、海底に係留される浮体式構造物である浮魚礁があります。また、魚礁の材質はコンクリート、鋼、木材、石材などがあり、その単体形状は、数メートル~数十メートル以上のものもあります。
調査では、対象種の環境条件、適地選定及び設計に必要な水質、底質、海底地形、流れ、餌料生物などを把握します。また、設計では、調査結果に基づき、造成規模、構造物の配置、魚礁構造等を決定します。特に、求められる点は、魚群探知機に認識可能な高さ、沈下・埋没・洗掘しない構造、流況に対し安定する構造であることです。
最も形状の大きな人工魚礁として、人工湧昇流発生構造物が挙げられます。この魚礁は、沖合の海底に人工山脈を造成し、海底層の豊富な栄養塩類を表層まで押し上げることにより餌料となるプランクトン発生を促し、水産生物が集まる漁場を創出するものです(図1参照)。
参考文献
水産庁(平成28年):漁港・漁場の施設の設計参考図書〔下巻〕,公益社団法人全国漁港漁場協会
(2017年11月08日 更新)
(2016年11月14日 初稿)