我が国の漁業管理では、漁船の隻数等の制限によるインプットコントロールや産卵期の禁漁や網目の大きさを規制するテクニカルコントロールが主流となっていますが、欧米では、科学的調査から結論付けた総漁獲可能量から管理するアウトプットコントロールが主体となっています。
漁業管理では資源量の推定が重要であり、対象種の生活史、漁獲量、操業実態、漁場環境などのデータを科学的に解明する仕組みが必要となります。このため、今後の資源管理では自然資源である水産生物、漁場、漁場環境を社会インフラ同様に資産として捉え、全体のバランスを中長期的にコントロールする必要があります。
本管理は、地域全体のライフサイクルコストが最小となる漁場環境の整備に向けて、計画的な調査研究・予測評価・情報共有を実施することで、水産業を持続的に維持・発展することを目的としており、漁場から得られたモニタリングデータや科学的知見を基盤データとして利活用し、地域に有効なネットワーク構築・合意形成などを創出します。
具体的には、研究・行政機関等が実施する漁場の流況や水質のモニタリング、これらの科学的データを元にした三次元的な解析・評価結果を空間情報プラットフォームとして整備し、この上に漁業従事者の情報等を重ね合わせ、共有化することで、地域全体の資源管理が効率的かつ持続的に運用されます(図1参照)。
参考文献
1)大森 信(2015年2月):駿河湾サクラエビ漁業の今日、海洋政策研究財団 ニュースレーター、第349号。
2)山尾政博、島秀典(2009年2月):日本の漁村・水産業の多面的機能:(有)北斗書房。
3)小笠原勇、井下恭次、金子 俊幸(2015年5月):水産資源マネジメントへの空間情報の利活用:平成27年度日本水産工学会学術講演会
(2016年11月09日 初稿)