橋梁には、管理者によって、高速道路・一般国道・県道・市町村道などの「道路橋」や新幹線や在来線の「鉄道橋」、用水の「水管橋」などがあります。このうち、私たちが日頃使っている「道路」の「橋梁点検」 (Bridge Inspection)は、日常的に道路パトロールカーや踏査による点検を実施する「日常点検」、一定の期間ごとに「近接目視点検」という橋梁の様々な部材に近づいてその状態を点検する「定期点検」、地震や土砂災害などの発生後に、通行可否判断や応急復旧のために実施する「緊急点検」があります。
橋梁点検では、橋梁の部材が経年劣化や疲労によって耐久性が低下し、安全性に影響を及ぼすような損傷を早期に発見するものと、利用者や第三者の被害に繋がるような損傷を早期に発見するものがあり、それぞれの目的に応じて、点検の方法や着目する部材が変わってきます。安全性に影響を及ぼすような損傷とは、橋桁の腐食やコンクリートのひびわれなど、損傷が進行すると橋の安全性が保たれないもののことを言います。利用者や第三者の被害に繋がるような損傷とは、欄干や照明灯などが腐食して部品が落下したり、コンクリート片が落下して通行者に被害を及ぼすようなもののことを言います。
近接目視点検を行うためには対象部材に近づかなければならず、「高所作業車」や「橋梁点検車」などを使用することにより、交通規制を伴うこともあります。最近では、点検技術者が近づかなくても近接目視点検と同等な結果が得られるよう、点検装置やモニタリングシステムの開発が盛んに進められています。
すべての構造物は、新しく建設された直後から年々老朽化していき、いずれ更新や廃棄といった有限の寿命をもつもので、人間の一生と同じような世話や配慮が必要です。例えば、人間ドックを定期点検と捉えた場合、検査技師が橋梁点検者であり、医師が橋梁診断技術者と言えます。橋梁点検者による正確な点検が、適切な措置(治療)を施すための重要な要因となり、橋の寿命や維持管理費に大きく影響します。そのため、橋梁点検者にも相応の技術力が求められます。
(2015年01月28日 初稿)