測定誤差(計測誤差)には、3種類がありますが、そのうち、過誤(mistake)は、目盛りの読み間違いや、測定値の記録ミス、計算の誤りなど、測定者の不注意によって生ずる誤りです。これらは、記録時の復唱、読み合わせ、検算などを十分注意して行ったり、データチェックを行ったりすることにより除去することができます。
系統誤差(systematic error)は、誤差を生じさせる原因が明らかで、一定条件下では常に一定の質と量の誤差が生じるもので、定誤差とも呼ばれます。測定者のくせなどから生じる個人的誤差、器械の特性や目盛りなどから生じる機械的誤差、温度、気圧、湿度などから生じる物理的誤差などがあります。これらは、その原因と特性を究明すれば、理論的に取り除くことができるもので、測定装置を十分に調整や較正すると同時に、温度や湿度などの測定時の環境を記録し、それに基づいて補正することにより、除去することができます。
偶然誤差(random error)は、原因が明らかでなく、測定値から過誤や系統誤差を取り除いてもなお残る小さな誤差であって、誤差の符号や大きさがランダムに生じるものです。測定回数がきわめて多いとき、①絶対値の小さい誤差の生じる確率は大きい誤差の生じる確率よりも大きい、②絶対値の等しい正負の誤差は同じ回数だけ生じる、③絶対値の非常に大きい誤差はほとんど生じない、という特徴があります。ガウス(Gauss)の誤差法則によれば、偶然誤差の確率分布は、平均が0の正規分布となります。
真値そのものを直接求めることはできないため、測定の目的は測定値から真値の推定値を求めることにあります。そこで、測定値の処理では、偶然誤差のみが含まれているとして、誤差法則に基づいて真値の推定値を求めます。
(2021年11月08日 更新)
(2016年11月04日 初稿)