設計津波水位

津波対策検討では二つの津波レベルに分けられます。一つは、1,000年に1回程度と発生頻度は低いが、甚大な被害となる津波(レベル2津波)です。もう一つは、南海地震津波のような数十年から百数十年の頻度で発生し、レベル2津波よりも水位は低いが大きな被害を発生させる津波(レベル1津波)です。設計津波水位はレベル1津波の越流防止を目的とした海岸保全施設の基準となる津波の高さです。設計津波水位よりも高いレベル2津波には、津波越流時に海岸保全施設が破壊されずに機能し続けるように補強した粘り強い構造にすることが目標とされています。

設計津波は、①湾の形状等の自然条件や津波被災履歴等より地域海岸の設定、②津波痕跡高調査や歴史記録・文献、シミュレーションより再現した過去の実績津波高さの整理、③地域海岸毎に津波高さ(対象津波群)の設定、を踏まえて対象津波(レベル1津波)を選定のうえ設計津波水位を算定します。津波は大きなエネルギーを有するため、津波の水位は堤防等に衝突すると上昇(せき上げ現象)します。設計津波水位の決定には、せき上げ現象を加味する必要があり、津波シミュレーションより算出されます。

最近では、スパコン、衛星、GPS波浪計などを利用したリアルタイムの観測監視システムにより、巨大津波に対する避難体制が整備されています。具体的には、地震発生後から30分以内に津波浸水被害推計を行うシステムが開発されています。

図1 設計津波水位の考え方

(2017年9月22日 初稿)

English

Design Inundation Depth

定義

海岸保全施設では、高潮、波浪、津波、流れ、漂砂、海浜形状、地震、環境、利用などを設計条件として考慮します。このうち、設計津波水位とは、住民の生命や財産の保護のために全ての海岸で設定される基準の津波の高さです。高さの設定は、最大クラスに比べ津波高は低いが発生頻度は高く大きな被害をもたらす津波(レベル1津波)を対象に設定され、津波の越流防止が目的とされています。