オンラインの地図サービス提供に伴い、地図を見たり、地図を使って場所を検索したり、日常生活と地図との関わりが深くなってきました。地図を使う機会が増えると、「こんな地図があったらいいな」「もっとこんな情報が載っていたらいいのに」というような地理空間情報への期待・要望も高まります。
こうした地理空間情報への期待や要望を、ユーザーが自ら実現したのが、VGIです。近年ICTの発展・普及を推進力とし、ユーザー参加型の地理空間情報が数多く作成されるようになってきました。なお、VGIという言葉を最初に提唱したのは、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校の地理学名誉教授Michael F. Goodchild氏です。
VGIの例として、オープンストリートマップ(Open Street Map、略称OSM)が挙げられます。OSMは2004年に自由な地図をつくることを目的として英国で始まりました。OSMの活動に特に注目が集まったのは、2010年のハイチ大地震の折でした。基盤地図が整備されておらず救助活動に支障があった現地に対して、世界中のボランティアが協力してWebを通じた衛星画像のマッピングを行い、基盤地図を整備して現地の後方支援を行いました。以来、同様の活動は日本でも行われ、東日本大震災や熊本地震の災害時に被害状況等の地図が作成されWeb上で公開されています。特にこうした災害時の取り組みは「クライシスマッピング」と呼ばれています。
参考文献
Michael F. Goodchild (2007) : “Citizens as sensors: the world of volunteered geography”, GeoJournal 69 (4): 211–221
(2016年11月02日 初稿)