自動車を例にLCAの考え方を見てみます。自動車のライフサイクルには、製造段階、使用段階、廃棄段階があると考えられます。製造段階では、鉄、アルミ、プラスチック、ゴム、ガラスなど様々な材料の採掘や製造に伴う資源消費と環境負荷を、車1台あたりで計上します。使用段階では、直接自動車から排出される環境負荷だけでなく、燃料製造やその前の採掘時の資源消費と環境負荷も使用した燃料の量に応じて計上します。この他、修理やメンテナンスで使用されるオイル、交換部品等についても同様に考えます。最後に、廃棄される時にも、廃棄による埋め立ての環境負荷だけではなく、埋め立てるのに必要なトラック輸送や解体作業によって生じる資源消費と環境負荷も計上します。こうして、環境への影響を、製造段階、使用段階、廃棄段階のそれぞれの段階で計上した後、それらを足し合わせ、自動車のライフサイクル全体で環境への影響を算出します。
このように、LCAでは、製品・サービスの環境への影響を、製造段階や使用段階、廃棄段階といったライフサイクルの段階ごとに算出することから、各段階のライフサイクル全体に占める影響の大きさなども分かります。LCAによって、生産者は、どの段階での改善が必要かを検討できるようになる一方、消費者は、製品・サービスの購入に際して、環境への影響の大きさを比較し製品やサービスを選ぶといった環境に配慮した消費行動を取ることも可能となります。
参考文献
玄地 裕 他 (2010年):地域環境マネジメント入門:LCAによる解析と対策, pp.17, 東京大学出版会
日本工業規格JIS Q14040:2010 (ISO 14040:2006) 環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠組みEnvironmental management-Life cycle assessment-Principles and framework
(2016年10月21日 初稿)