レーダーは、電波を利用して物体までの距離やその方向を測定することができます。海洋レーダーは、海に近い陸に設置したアンテナから海に向かって、電波を発射し、海面の波から反射してきた電波を計ります。計った電波を調べることによって、岸近くから100km程度沖までの広い範囲で、海の流れがどのくらいの速さでどの方向に向かって流れているかを知ることができます。
海洋レーダーは、電波を作り出す送信機、空中に電波を発射するアンテナと戻ってきた電波を受けるアンテナ、そして戻ってきた電波を解析する受信機で構成されます。発射した電波と戻ってきた電波の周波数の差(ドップラー効果)などから海の流れの速さや流れる向きを知ることができます。これは自動車のスピード違反を取り締まったり、ピッチャーが投げたボールの速さを測定したりするのに使われる「スピードガン」と同じ原理です。
測定した流れは、船から海に投げ出された乗組員、座礁した大型タンカーから流出した油、そして航行の障害となる流木などがどこに流されるかを予測し救難救助や障害物除去に役立てます。また、数十キロ沖で津波を測定できることから、津波に対する防災や減災への利活用も期待されています。現在、日本では約50基のレーダーが設置され、東京湾や大阪湾などの流れや、黒潮や対馬海流などの流れがインターネットで公開されています。
(2019年05月10日 更新)
(2015年01月06日 初稿)