地表に降った雨や雪は地表面に一時的に貯留され、一部は地下に浸透し、残りは地表を流れて河川や湖沼となり、やがて海に流出します。地下に浸透した水は地下水として、地下を緩やかに流れ、地表と行き来しながら、最終的には海に至ります。この間、河川・湖沼・海及び地表面から、一部が蒸発散によって大気に戻ります。大気中では、水蒸気となった水が雨や雪となって、再び降水となります。このように、水は大気・地表・地下の広大な空間の中で循環しており、水循環と言います。複雑な現象を、数式で置き換え解析することをシミュレーション、それに用いる方法がモデルです。流域水循環モデルは、流域の中の水循環を解析するためのシミュレーションモデルです。
流域水循環モデルは、水の挙動を踏まえて、地表流モデル(地形に沿った水の動き)、河川モデル(河道内の水の流れ)、地下水モデル(地層に応じた地下水の流れ)、浸透モデル(地表水と地下水との行き来)などから構成されます。モデルには膨大な情報が不可欠ですが、衛星や航空レーザーなどのデータを用いた空間情報を駆使することで、効率的で高精度の解析とすることができます。
循環する水の挙動と、その影響要因を適切に評価することが不可欠です。治水・利水計画だけでなく、建設工事や汚染対策などの問題を防止・減少しつつ、水が持つ様々な機能を活用するために、流域水循環モデルは、重要な解析ツールとなります。
参考文献
・国際航業株式会社創立60周年記念出版プロジェクト(2007):モデリングとデザインの調和、pp274-276、国際航業株式会社
(2015年11月18日 初稿)