人やモノの円滑な移動は、社会・経済を支える重要な活動の一つです。そして、その活動を将来にわたって安定的に機能させるためには、鉄道網や道路網の適切な計画が必要になります。ここでいう「適切な計画」とは、需要に見合った性能や構造、事業の採算性や環境への影響について検討することです。これらの検討では、新設される鉄道や道路がどの程度利用されるのか、それがネットワークに加わることで、人やモノの流れがどのように変化するのか、といったことが基礎になります。それを予測するのが交通需要予測です。
予測の方法には様々なバリエーションがありますが、基本的には次の4つのステップを踏みます(4段階推定法といいます)。それは、①どの地域にどの程度の移動が発生するのか(発生・集中交通量の予測)、②それはどこへ向かうのか(分布交通量の予測)、③どのような手段で移動するのか(分担交通量の予測)、④どこを通って行くのか(配分交通量の予測)、です。
これらの予測は、将来的な人口や経済状況の推移、それぞれの交通機関や経路にかかる時間や料金を指標としたシミュレーションモデルによって計算します。現在、予測の精度についてはまだまだ課題がありますが、近年、センサ-技術やITの進歩により、詳細かつ膨大なデータを解析することが可能になってきており、これらの技術を活用した、きめ細かく交通需要を把握する方法が研究されています。
(2015年11月18日 初稿)