平成27年9月の関東・東北豪雨災害では、鬼怒川の堤防が決壊し、広範囲かつ長期間の浸水が発生するとともに、住民等の避難の遅れも加わり、近年の水害では類を見ないほどの多数の孤立者が発生しました。今後、施設の能力を上回る洪水の頻度が高くなる可能性があることを踏まえると、行政、住民が「施設では防ぎきれない災害は必ず発生するもの」へと意識を変え、社会全体で洪水氾濫に備えることが重要です。
このような背景から、平成27年12月に社会資本整備審議会では、大規模氾濫に対する減災に向けて、速やかに実施すべき対策、早期に実現を図るべき対策を具体的に示した答申をとりまとめました。この答申を踏まえ、新たに「水防災意識社会 再構築ビジョン」として、全ての直轄河川とその沿川市町村において、水防災意識社会を再構築する取組を行うこととされ、各地域において河川管理者・都道府県・市町村等からなる協議会等を新たに設置しています。
ここでは、地域特性に合わせた対策を検討し、例えば、逃げ遅れゼロに向けた迅速かつ的確な避難行動として、プッシュ型の河川水位情報の提供や避難行動に直結したハザードマップへの改良等の「住民目線のソフト対策」の推進に取り組んでいます。また、堤防整備・河道掘削等による「洪水を安全に流すためのハード対策」、決壊までの時間を少しでも引き延ばすよう、堤防構造を工夫する等の「危機管理型ハード対策」を実施しています。
参考文献
「水防災意識社会 再構築ビジョン」(平成27年12月11日) 国土交通省 水管理・国土保全局
「大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について ~社会意識の変革による水防災意識社会の再構築に向けて~ 答申」(平成 27年12月)社会資本整備審議会
(2016年10月26日 初稿)