水理地質図

水理地質図の作成にあたっては、水で飽和された透水層である、帯水層を地質図の情報から明確にする、帯水層単元の確立を行います。その際、帯水層の水理地質的な判定には、層相による地層の定性的な区分や地層のもつ透水性や貯留性といった物理的な指標が参考となります。帯水層の定量的な指標としては、井戸や湧水の情報が重要であり、井戸掘削後に井戸の地下水を汲み上げて帯水層の能力を調べる揚水試験の結果が、物理的な判定に役立ちます。また井戸の情報は、地下水の深度や地下の地質状況を知ることにもつながります。つまり水理地質図には、井戸や湧水の位置、地下水の深度あるいは標高の等高線や帯水層の深度方向の情報が表現されます。

日本では水工学の用語の影響もあり、水理地質学という名称が使用されていますが、地質学の中の応用分野で地表水や地下水を対象として扱う場合は、水文地質学とされ、その結果つくられる図面は地質図を基本とした水文地質図となります。ここでは水理地質図と水文地質図は同義語とします。

地下水を主な水源とする海外の発展途上国では、水理地質図は地下水開発に欠かせない資料ですが、水理地質図が、実際の井戸の掘削を担当する地方の水事務所などに普及されていないことも多く、水理地質図の利用方法に関する技術普及は生産井戸の成功率を高めるためにも重要な課題です。

(2015年11月10日 初稿)

English

Hydrogeological map

定義

水理地質図とは、地質図の地層の分布や重なり及び層相を基準として、地層の粒子間隙やサイズ、あるいは固結度、岩石の割れ目の物理的な特性から判定された透水性と貯留性に注目し、層相区分した地質図です。