河川氾濫解析

1つの河川に雨水や雪解け水が流れ込む範囲を流域と言います。その流域に大雨が降ったり、急に雪解けが進んだりすると、川を流れる水が急増します(ここで、一定の時間内に川を流れる水の量を河川流量と言います)。また、その河川がほかの河川に合流すると、合流先の河川流量が増えます。このとき、流下する水量が、河川が流すことのできる流量(流下能力)を超えると、堤防が決壊したり、堤防を超えたりして、水は河道からあふれて人家や農地のある土地に広がります。これが河川氾濫です。

河川氾濫解析では、降雨量や融雪量の時間変化を入力し、河道内の水の流れを予測します。また、河道内各地点の流量の変化を予測します。この流量が流下能力を超える地点では、水があふれ、ときには堤防が破壊されます。つづいて、河川氾濫解析では、河道の外に出る流量や洪水が拡がる様子の時間変化を予測します。この解析を行うには膨大な計算が必要なため、コンピュータシミュレーションが用いられます。

大規模な河川氾濫の例としては、1947年のカスリーン台風があげられます。このときは、利根川と荒川で堤防が決壊し、埼玉県東部から東京都区部東部にかけて、多くの家屋が浸水しました。これは戦後間もない災害のため、当時といまでは土地利用が大きく変わっています。そこで、中央防災会議は現時点で同様な洪水が発生した場合の河川氾濫解析を実施し、被害軽減対策の提言をしています。

河川氾濫解析の技術は洪水の浸水危険性を予測する洪水浸水想定区域図作成に活かされています。
そして、洪水浸水想定区域図は避難等に関わる情報を加えた洪水ハザードマップの基礎資料として活用されています。

(注)用語「河川氾濫解析・浸水想定区域図」(2016年09月07日 初稿)を改め、新たに2つの用語「河川氾濫解析」「洪水浸水想定区域図」として説明しています。

(参考文献)
中央防災会議 大規模水害対策に関する専門調査会(2010):大規模水害対策に関する専門調査会報告 首都圏水没 ~ 被害軽減のために取るべき対策とは ~.

(2020年11月13日 初稿)

English

Numerical Simulation of Flood Inundation

定義

河川氾濫解析は、大雨などによって、河川が流せる流量を超える水が流下したときに、河川水があふれて広がる現象をコンピュータで計算するものです。