津波浸水


航空レーザによる計測データを用いることで、詳細な津波による浸水予測や被害想定、海岸構造物などの効果検証が可能な高精度津波シミュレーションを行う事ができます。

津波の浸水予測では、地形モデルの重要性は強く認識されていましたが、従来の津波シミュレーションでは、国土地理院の50mメッシュデータや都市計画図などから作成された地形モデルが使用されていたため、微地形に対応した浸水予測には限界がありました。

航空レーザ計測によるデータは、高さ精度15cm、水平精度30cm、計測密度1点/㎡程度となっているため、メッシュ幅が数m~10m程度の高精度で詳細な 地形モデルを作成することが可能です(図1)。
図1 地形モデルの比較

(左)レーザデータを用いた地形モデル (右)国土地理院50mメッシュを用いた地形モデル

津波シミュレーションへの適用

図2に示す以下の手順により、航空レーザ計測データから地盤高データ(DEM)を抽出し、堤防や建物などを津波シミュレーションの目的に応じて加工した地形モデルを作成します*1。

1.DEM(地盤高データ)作成

レーザ計測データに含まれるノイズを除去した後、建物や樹木などの地物の表層面上のデータを削除した地盤高データを作成します。

図2 津波用詳細地形モデルの作成フロー

2. 堤防・盛土の抽出

堤防などの津波減災施設や盛土などの津波氾濫水の挙動に重要な地物を、再抽出します。

3. メッシュ化

1(DEM)と2(再抽出した堤防・盛土等のデータ)を合わせ、TIN (Triangulated Irregular Network)を作成し、メッシュ化します。

図3に示した事例のように、ここで紹介した手法で作成した地形モデルを用いることで、防潮堤や道路の盛土が再現され、詳細な津波遡上計算が可能となります。
図3 津波用詳細地形モデル例

詳細地形モデルの効果

詳細地形モデルを用いる事により、より正確な津波シミュレーションが可能となります。図4に示すように、従来の手法に比べ、精度の高い浸水範囲の予測が可能となり、適切な避難場所・避難経路の設定や 様々な津波防災事業の効果を評価できます。

図4 地形モデルによる津波浸水予測結果の違い

左図:従来地形モデル使用 右図:本調査手法地形モデル使用

今後の展望

事例で紹介したような津波対策の効果を適切に検証するには、ここで紹介した高精度な地形モデルが必要であることが確かめられています。

今後は、目的に応じて適切な地形モデルを選定した津波シミュレーションが求められていくと考えられます。

参考文献
*1 村嶋陽一 他(2006) 津波浸水予測における航空機搭載型レーザーデータの適 応性.海岸工学論文集, 第53巻:pp.1336-1340.