土砂移動


日本は気候や地質の特徴から多くの土砂災害に見舞われてきました。現在も人口の局地化による都市部周辺の急速な宅地開発など、土砂災害危険箇所は増加の一途をたどっています。安全・安心な生活を送るためには、適切な土砂災害対策が必要です。そのためには土砂移動現象を適切に把握し、予測することが求められています。

航空写真測量による土砂移動把握

航空写真測量の技術を用いて地域の変化を定量的に評価することで、土砂移動の実体把握が可能です。富士山大沢崩れにおける経年的な計測は代表的なもので、これによると、大沢崩れでは毎年平均約10万㎥以上が崩壊し、数年に一度土石流が発生していることがわかりました。(図1は、過去35年間の変化を航空写真測量により把握した結果です。)災害時、広域の状況把握を安全・迅速に行うには、空からの調査・測量は有効なのです。

図1 富士山大沢崩れにおけるS46-H18の地形変化状況*1 (航空写真測量による)

航空レーザ計測による土砂移動把握

航空写真測量は、写真の撮影状態によりその精度が左右される点が課題とされていましたが、近年は航空レーザ計測の併用により、正確な情報収集が可能となり、土砂移動の前後のデータがあれば、地形変化を面的に精度よく把握することが可能です。(図2は、2時期の航空レーザ計測値の差分を示したものです。)

図2 1年間の河床変動状況*2(航空レーザ計測による2時期の計測値の差分)

今後の展望

これまでの土砂移動把握の蓄積や、精密な地形計測により、土砂移動の予測はかなり高いレベルで可能となっているのですが、まだまだ未解明な点が多く残されています。特に、どのような場所で、どのようなタイミングで土砂移動が発生するのかという点について、警戒避難への利用等のために、その解明が望まれています。

地理空間情報技術は、このような課題の解明に今後とも貢献していくことでしょう。

参考文献
*1 平成18年度 富士山大沢川源頭域変遷状況調査業務報告書 国土交通省富士砂防事務所(2006)
*2 小林幹男 他(2003) 航空レーザ計測を用いた河床変動状況の把握事例.平成15 年度砂防学会研究発表会概要集:pp.18-19.